一通り洗い物も終わり、奥に腰掛け煙草を吸っていると、安田が近付いてきた。
「幸治、おれにも一本くれよ」
幸治は、安田に煙草を渡し、火を着けた。
「お、火着けるのも上手くなってきたじゃねえかよ」
「でしょ。美帆に教えてもらったんだ」
「そうか」
安田はそう言うと、大きく煙りを吸い込んだ。
「ねぇ安田さん。だからさぁ、そろそろいいでしょ?ホール出してよ」
「バカ言ってんじゃねぇよ。そんな簡単なもんじゃないんだよ。第一いつも言ってんじゃねぇかよ。20歳のガキをホールに出す程しょぼい店じゃねぇんだよ」
「おれ、よく老けて見えるって言われるよ」
「バーカ。老けて見えるったって23・4だろーが。ガキだよガキ。それからおまえ。その長髪どうにかなんねぇか?ホストじゃねぇんだから」
「じゃあ、切ったらホール出れる?」
「だから駄目だって。あ、そうだ。今日はもう暇だからよ、先に上がって髪の毛切ってもらえよ」
安田は幸治の髪の毛を掴むと「ホレホレ」と言いながら、指で切るマネをしてみせた。
幸治は、それを必死で払いのけようとする。
「髪切れったって、この時間じゃやってねぇよ」
「あん?なに言ってんだよ。いるじゃねーかよ。カリスマ美容師のタマゴがよ」
「カリスマ美容師のタマゴってなんだよ。タマゴじゃカリスマじゃねぇじゃん。だいたい美帆だってまだ仕事だろ」
「もう上がったよ」
振り返ると、そこには私服に着替えた美帆が立っていた。
幸治と同い年の美帆は、新潟から上京してきた美容師のタマゴで、昼間は専門学校に通い、夜はここ『ClubBell』でホステスとしてアルバイトをしているのだ。
端正な顔立ちに、肩の下まで伸びたサラサラの黒髪に惹かれ、彼女を指名する客も少なくない。
「私も、気になってたんだよね。それに、あんた絶対に短髪の方が似合うって」
「いや、おれは別に何でもいいんだけどさ。ただ面倒臭いだけで」
「じゃあ、切ってもらえよ。な」
安田はそう言うと、ポンと幸治の肩を叩き、再びホールへ戻って行った。
「幸治、おれにも一本くれよ」
幸治は、安田に煙草を渡し、火を着けた。
「お、火着けるのも上手くなってきたじゃねえかよ」
「でしょ。美帆に教えてもらったんだ」
「そうか」
安田はそう言うと、大きく煙りを吸い込んだ。
「ねぇ安田さん。だからさぁ、そろそろいいでしょ?ホール出してよ」
「バカ言ってんじゃねぇよ。そんな簡単なもんじゃないんだよ。第一いつも言ってんじゃねぇかよ。20歳のガキをホールに出す程しょぼい店じゃねぇんだよ」
「おれ、よく老けて見えるって言われるよ」
「バーカ。老けて見えるったって23・4だろーが。ガキだよガキ。それからおまえ。その長髪どうにかなんねぇか?ホストじゃねぇんだから」
「じゃあ、切ったらホール出れる?」
「だから駄目だって。あ、そうだ。今日はもう暇だからよ、先に上がって髪の毛切ってもらえよ」
安田は幸治の髪の毛を掴むと「ホレホレ」と言いながら、指で切るマネをしてみせた。
幸治は、それを必死で払いのけようとする。
「髪切れったって、この時間じゃやってねぇよ」
「あん?なに言ってんだよ。いるじゃねーかよ。カリスマ美容師のタマゴがよ」
「カリスマ美容師のタマゴってなんだよ。タマゴじゃカリスマじゃねぇじゃん。だいたい美帆だってまだ仕事だろ」
「もう上がったよ」
振り返ると、そこには私服に着替えた美帆が立っていた。
幸治と同い年の美帆は、新潟から上京してきた美容師のタマゴで、昼間は専門学校に通い、夜はここ『ClubBell』でホステスとしてアルバイトをしているのだ。
端正な顔立ちに、肩の下まで伸びたサラサラの黒髪に惹かれ、彼女を指名する客も少なくない。
「私も、気になってたんだよね。それに、あんた絶対に短髪の方が似合うって」
「いや、おれは別に何でもいいんだけどさ。ただ面倒臭いだけで」
「じゃあ、切ってもらえよ。な」
安田はそう言うと、ポンと幸治の肩を叩き、再びホールへ戻って行った。