クリスマスイブという事もあり、今日のClubBellはとても暇だった。
閑古鳥が鳴くとは、正にこのことだろうと幸治は思った。
それを安田に話したら、バカヤローと怒鳴られた事は言うまでもないだろう。
毎年クリスマスは暇なのだが、それはClubBellの客層の顕れでもある。
ClubBellに通う客は、家族持ちが多く、土日やイベント事の日は、皆家族サービスをする為だ。
だから、当然定休日は土日だ。
こういう暇な日は、中村という男性に店を任せ、安田と幸治は先に家に帰ってしまうという事も、しばしばある。
今日は正にそれだ。
美帆と同伴で来た松岡が11時に帰ると、幸治と安田は美帆を連れ、すぐに帰宅した。
そして家に帰ると、民が夜食を用意して待っていた。
3人は順番にシャワーを浴び、食卓に全員が揃うと同時に、民の用意した夜食をつまみに晩酌を始めた。
「お、そういえば今日はなんか買ってもらったのか?」
安田が美帆に聞いた。
美帆は笑顔で「バッチリ」と言い、バッグの中から綺麗に包装された箱を出した。
「なに買ってもらったの?」
幸治がそれを覗き込んだ。
「腕時計。欲しい?」
「いらないよ。レディースだろ?」
「質に入れたら、高くつくよ」
「まじで?」
「まじ」
「ちょうだい」
幸治がそう言った瞬間、安田が腕を大きく振り上げ、幸治の頭を小突いた。
「痛って」
「ばかやろう。お前には小遣いやってんだろ」
「だって美帆がくれるって言うから…」
幸治は、頭を摩りながら、美帆を指差した。
「あんた人のせいにしてんじゃないよ。男らしくない」
美帆はそう言うと、腕を組みフンと鼻息を荒げ幸治を睨んだ。
民は、まるでテレビでも見ているかのように、その様子を傍観し笑っていた。
「あ、そういえば安田さん。」
美帆は心配そうな表情で安田を見た。
「ん?どうした?」
「今日ね、松岡さんとお茶をしてた時なんだけどさ」
「あぁ。待ち合わせの時か」
「うん。なんだか幸治の事を気にしてるみたいだったの」
「幸治を?」