教室まで戻ると新見に首根っこを押さえつけられた。


「遅い! 結局私が全部したじゃないのよ。アンタ、実行委員でしょ」

「す、スンマセン」


もはや逆らう気力も無い。
怒りの形相の新見に、俺はただただ頭を下げる。


「たかだか写真撮るだけなのに何やってんのよ。お詫びはアイスね。中津川くんのおごりで。和晃と珠子の分もよ」

「なんであいつらの分まで!」

「だって一緒に帰るんだもの」


謎の論法だな、オイ。
色々反論したい思いはありつつ、打ちひしがれている俺はただ頷いた。

やがて、担任が入ってきて点呼をとる。
夏目だけがいまだ戻ってきていなかったが、先生はまだ片付けてんのかと勝手に納得したかと思うと帰りの挨拶をした。


「夏目に会ったら今日はおつかれさんって言っておいてくれ」


前の席である俺にそう言う。
頷いては見たけど、これから夏目を探すのはめちゃくちゃ気まずくて嫌だ。

クラスの面子はそれぞれに動き始める。
親が待っていて、一緒に帰るヤツはそそくさと教室を出て行くし、友達同士でこれから打ち上げって言ってる奴らもいる。

俺はこれからどうすればいいだろう。

夏目を探すべきか、
新見にアイスをおごるべきか、
サユちゃんともう一度話すべきか。

一番したいのは三番目だが、何をどう話せばいいのか分からない。

ああもういっそ、親が一緒に帰ろうって言えばこの状況からは抜け出せるんだが。
縋るような気持ちで携帯を見ると母親からメールが入ってる。

【先帰るわよ。お友達と打ち上げとかあるでしょ】

全くもってご理解ある態度。
そうなんだけど、今は【一緒に帰ろう】と言って欲しかった。
この場から逃げる理由が無くなってなんだか切なくなってくる。