夏目が一歩詰め寄ると、サユちゃんはゆっくり後ずさりする。
「俺、サユちゃん先輩、俺っ」
「な、えと、あの」
「俺……大事な話があるんです」
「でも、片付けもしなきゃ。……あの」
あくまでも逃げ腰のサユちゃんに、夏目が畳み掛けるように言う。
「サユちゃん先輩がずっと好きだったんです。俺と、……付き合ってください!」
告白したのは夏目なのに、俺の心臓もヤバイくらいにバクバクなってる。
あんな勝負をした以上、そのうちに夏目が告白することくらい分かっていたのに、悔しいような感情に支配され、俺は唇を噛み締めた。
サユちゃんはじりじりと後ろに下がり、近くにあった丸椅子を倒してしまう。
倒れて半回転した音はけたたましく、夏目もサユちゃんもその椅子に視線を奪われる。
そして、その視線の延長上にいる、扉の陰に隠れた俺を見つけ出した。
「……サトルくん」
「え? サトル?」
夏目は俺を見つけると、顔を真っ赤にして睨みつけてきた。
「お前っ、何聞いてんだよ」
「ごめん、サユちゃんを探してて。つい」
「つい、じゃねぇだろ。……わかってるよな。お前に邪魔する資格なんてないってこと」