「まあいいや。見かけたら叱っておいて」
「俺がですか?」
流石に先輩にそんなこと出来ないだろうって言い返すと、和奏先輩はサラリという。
「だって、サトルくんの言葉が一番サユに影響力あるもん」
「え?」
パチクリと目を見開くと、先輩は「あれ?」と小さく呟く。
「気付いてない? だって私、今までサユがあんなに泣いたの見たこと無いよ?」
「それは俺が怒鳴ったから」
「あの強面の高木先生に怒られたって、サユはたじろがないよ。でも、サトルくんだったらたった一言で泣くんだよ?」
それって特別だからじゃない?
続けられたその言葉を聞き終える前に、俺は駆け出していた。
俺にだって、サユちゃんはずっと特別だった。
どんな時でも、声が聞きたいって思えるほど。
清々しく晴れた日は、空を見上げて笑う君を想う。
雨の日は、何故か泣き顔を思い出して、胸がツンとする。
今、どんな気持ちでいる?
例えばここに君がいるのなら。
俺はどんなことをしてでも君を笑わせたい。
笑って、俺の声を聞いて、そしてまた笑って。
そんな風に、ずっと一緒にいたい。