パニクっているうちに団子になって二位競争をしている二人がやってくる。
しかも保護者の方が速いときた。夏目が狙っていた紙は、別のおっさんに取られてやがる。


「あああああ」


叫ぶ夏目にざまみろと舌をだし、でも自分の紙を見て途方にくれる。

どうしよう、どうすれば。

迷いながら一般席に視線を向けて、思いついた。


ルイがいるじゃないか。
大事な妹だし、お題に間違いはない。

すぐさま走りだし、寝てるイッサの隣にいるルイの元へ行く。


「ルイ、一緒に来てくれ」

「えー? 無理」

「なんでだよ。今借り物なんだよ、頼む」

「だってイッサが」


そういうルイの視線を追うと、イッサがルイの服の裾を掴んだまま寝ている。

何だこいつらの甘い雰囲気は。
おまえら大丈夫なのかよ。
あの母親の腹から二人同時に生まれたんだぞ、お前たちは恋人ではないんだぞ!


「それにこのお題だと私じゃないじゃん」


ルイは、俺の手からするりと紙をひきぬき中身を確かめると、腹の底から大きな声を出した。


「サユねーちゃーーーーん!」

「ひゃあ、はいっ!」


ゴールから戻ってくるサイジに近寄ろうと、一般席からほど近く辺りを走っていたサユちゃんが、声に驚き直立不動になる。


「おにーちゃんと走ってあげてー」

「え?」

「オイ。ルイ」

「いいから早く行ってらっしゃい」