言い合いをしているうちに競技は始まる。
第一レースに入っているサイジが、もうスタートしていた。
拾った紙になんて書いてあったかは知らないが、父親の下に呼びかけに行く。
おじさんはサイジを背中に乗せて走りだした。先を行っていた奴らも抜かしてダントツ一位。
「おとうさーん! サイちゃーん! やったね」
聞こえるのはサユちゃんの歓声。
もうトイレからは戻ってきたのか。ってことはばっちり見られてるってことじゃん。
頭を抱えているうちに、あっさり自分たちの番になる。
俺と夏目の他に出場者は四人。
いずれも誰かの保護者と思われる四十代から五十代くらいの外見で、男性が一人に女性が三人だ。
スタートピストルとともち駆け出し、俺はダントツの一番。余裕かまして後ろを振り向くと、夏目は誰かの父親と二位を争っていた。
まっすぐ進んだ先の紙を取り、めくってみて目が点になる。
【あなたの大切な女の子】
思わず、キッと木下を睨みつける。
ヤツは親指を立てて俺にポーズしてみせた。
ちげーよ。褒めてねーよ。
なんてこと書きやがる。
これでサユちゃんを連れて行ったら、それだけで完全なる告白になっちゃうじゃないか。
いかん、どうすれば。