本日の中で唯一とも言えるお遊び競技。
応援合戦が有名はうちの高校は、保護者のみならず近隣の住人も観覧に来る。
そういった人たちにもぜひ何かしら参加してもらおうという趣旨で、5年ほど前から定番化した競技らしい……と言うのは、実行委員会長の談だ。


「ちょっと夏目、なんで俺が」

「木下先生が出ろって。確かにこれなら同じクラスでも競える。しかも足の速い遅いには関係ないしな。
ってわけで行くぞ。見ててくださいねー、サユちゃん先輩」

「ちょ、おい」

首根っこを引っ張られ、息苦しくなりながら夏目についていく。
それにしても、借り物競争って。
まさに運頼みじゃねーか。

そんなのにサユちゃんを賭けるなんて絶対いやだ。なに考えてんだよ木下のやつー!!





*

 夏目に引っ張って行かれたスタート地点。おっさんや誰かの兄弟であろう中学生達が集まっている。


「俺、やだよー。あ、サトルにーちゃん!」


どうやら実行委員は一般席から適当に参加要請をしているらしく、何故かサイジが引っ張られてきていた。


「サイジ。でてくれるのか。頑張ろうぜ」

「なんで俺だけ! イッサのやつずっと寝てて起きねぇし」

「あー。……アイツのことは俺もよく分かんねぇけど。ルイは?」

「出るわけ無いでしょって鼻で笑ってた」

「……うん。そうか。やりそうだ」


一般席を見ると、ルイとイッサの姿は最初から変わらないままだ。あいつらホントなにしに来たんだろう。