「……格好良かった。赤ベコ」

「え?」


キョトンと振り向いたサユちゃんの目は少し潤んでいる。
怯えさせてしまったのかと、ますます腹の辺りが痛くなる。


「サユちゃんの絵、すげぇって思ってる。でも、ただ」

「サトルくん」

「ただ。……俺は、サユちゃんに」


頼られたかった。
この一言が、何故か言えない。


「ううん。勝手なことばかりしてごめんね」


先にサユちゃんに謝られてしまう。
違う、違う、そうじゃなくて。


「違うんだ。……とにかく、泣かせてごめん」


そこまで言うと、サユちゃんはホッとしたように笑う。


「仲直りしよ?」

「……うん」


肝心なことは言えないまま、サユちゃんから差し出された手をとって握手しようとしたその時。


「なにやってんだよ、サトルー! ほら次の種目俺達も出るんだろ!」


突進してくる夏目。
おのれ、タイミング見計らって来やがって。


「あ、サユちゃん先輩いたんですか」


それも白々しいわ!


「信也くん。……次って、保護者競技じゃないの? なんで出るの?」


サユちゃんはキョトンと、グラウンド中央に目をやる。
会場全体に次の競技の出場案内がされていた。


『次は保護者自由参加になります、借り物競走です。お遊び感覚でぜひご参加ください』