そうして、競技は進んでいく。各団の応援合戦は一番の見所だ。

団長の伸びのある声で意気込みが語られた後は、応援歌を歌いつつパフォーマンス。
サユちゃんが描いた赤ベコは太陽の光を浴びて、室内で見た時よりももっと堂々とした姿を見せていた。

他の団は、元々が格好良い朱雀や白虎なのに、それにも見劣りしないなんてやっぱり凄い。


「私的には、7組のパンダがいいかな」


自分たちの番が終わり、他の応援パフォーマンスを見ているとき、近くにいた新見が言った。


「凶悪な顔してるけどな」

「そこがいいのよ」


新見の趣味もよく分からなねーな、と首を捻っているとその奥にサユちゃんが見えた。

しかも、こっちを見ていたのに、俺が見た途端に逸らしたことにショックを受ける。

腹の辺りがグルグルする。
どう謝れば、なんて思いつかない。だけどこの状況には耐えられない。

団席に戻る途中に、サユちゃんが輪の中から外れていくのが見えた。
トイレにでも行くのだろう。これはチャンス、と俺はサユちゃんを追いかけた。


「サユちゃん」

「さ、サトルくん」


呼びかけると、振り向いて困った顔をする。
いつもなら笑ってばかりなのに、俺はこんな顔をさせてしまうんだ。


「あのさ」

「わたし、トイレ行きたいから」

「待ってよ」


逃げようとするサユちゃんとの距離を一気に詰めて腕を掴む。足では負けるものか。