サイジの脇にはサユちゃんの両親と俺の両親がいて歓談している。
つか、高校生にもなれば親が来ないうちもあるのに、両親揃って来なくても。って、あれ? 双子はどこだ?
視線をずらすと、イッサは狭い一般席の一角を陣取り、まるで猫のように丸くなっている。
オイあいつ寝てるのか?
そこまでやる気ねーなら来るなよ!
そしてルイはその脇で膝を抱えながらつまらなさそうにポッキーをつまんでいる。俺の視線に気づくと、右手をヒラヒラと振った。
あいつら何しに来たんだろう。
……考えるのはやめよう。
双子の行動は俺にはよくわからない。
開会式が始まり、お決まりの国旗掲揚ややたらにイケメンな校長の長い話、そして準備体操が終わり団席に戻る。
俺は実行委員なので、用具の準備なんかも仕事のうちだ。
輪の中から外れるように集合場所に向かうと、その隙を狙ったかのように夏目がサユちゃんに近づいていく。
相変わらずのボテボテ走りの彼女の背中をポンと叩いて、何を話したのかはわからないけどサユちゃんは夏目に笑いかける。
堪らなくなって俺は全速力で用具係の集合場所に向かった。
「おう、サトル。やる気あんじゃねーか」
呼吸を荒くしている俺に、用具置き場で待ち構えていた木下がやかましく説明する。
「ほれ、まずは100メートル走だ。違う学年の時にゴールテープ持てよー」
木下はスタートピストル担当らしく、鼻歌を歌いながらスタート地点に向かう。
ガキじゃねーんだから、ピストル打てるくらいで喜ぶなよ。
ツッコミを込めて俺は奴の背中を睨んだ。