体育祭、開幕。
土曜の晴れ渡る空の下、調子が出ない俺。二組連合のテント前には、件の看板が立てかけられている。
躍動感ある赤ベコは、顔がマヌケなのにもかかわらずやけに格好いい。
木下の話では、高木先生も唸るほどだったという。
サユちゃんはすごい。分かっている。
こんな風に出来る自信があるから、すべて自分で背負ったんだ。それもなんとなく分かる。
それでも俺はまだ、サユちゃんに謝れていない。
目で追えば、時折目は合う。だけど、合った途端に互いに逸らしてしまう。
必要事項は話すけど、敢えて二人きりになるのは避けてる。最悪の状況だ。
「お前に勝って、絶対サユちゃん先輩に告白するからな」
団席で俺の脇に座りうるさく訴えてくるのは夏目。
お前のことはどうでもいいんだよ。俺は今それどころじゃねーんだ。
どうやって謝ったらいいのか。時間が経つと余計わからなくなる。
怒鳴ってごめん、……なんだけど。
あの時の俺の気持ちは嘘じゃないんだ。
サユちゃんがすごいとは思う、頼れる先輩だとも思う。
けど、そうじゃなくてもっとこう、甘えて欲しかったり、頼ってほしかったり。
ああもう、この気持ちを伝える的確な言葉が分からない。
「開会式が始まります。各団、入場門に整列してください」
アナウンスにしたがって俺達も動き出す。
「あ、サトルにーちゃーん!」
一般席から声を上げるのはなぜかサイジ。
ちょっと待てよ。お前が声をかけなきゃいけないのはサユちゃんだろ?
色々微妙にずれてる気がするぞ?