「俺が年下だからか?」
「……お兄ちゃんってさー」
ルイは再びわざとらしく溜息をつくと、立ち上がった。
「ゼンゼン分かってないよね。イッサのほうが女心わかってるよ」
「ちょっと待て、あの能面小僧に負けてるとは心外だ」
「イッサは大事なとこ間違わないもん」
そう言うと、ルイは小走りに扉に向かった。
開けると、イッサが待ち構えている。
「げっ、イッサ聞いてた?」
顔を赤くするルイの服の裾を、イッサは無言で掴んだ。ただそれだけの動作なのに、パワフルなルイがたじろぐ。
「なによ。……もう」
そのまま扉はパタンと閉められる。
最後にかいま見えた双子の間のビミョーな空気は大丈夫なのか。
双子だから普通の姉弟より親密なのはわかるけど、なんか変な雰囲気だったぞ?
そして、色々と意味深な事を言っていったな、小学生。
なんなんだ、あいつ。
母さんの小説とか読みまくってるから妙に耳年増なんじゃねぇの。
見かけは小学生だけどおばちゃんのようだ。
「頼られたいって」
サユちゃんは、誰からも頼りにされているじゃないか。
サユに任せとけば大丈夫って、和奏先輩もよく言うし、木下だってそういう。
皆から頼られたら疲れるじゃん。
だから。
「……俺にくらい、頼ってくれたらいいのに」
サユちゃんに頼られるような男になりたいのに。
現実は部屋でいじけて寝転がってる。
「どーしよーもねー」
つぶやきが重たい。悔しさのぶつけどころが分からず、俺はクッションをドアに投げつけた。
*