「……なんかあったんでしょ」


高い声なのに、何故かすごみの聞いた悪魔のような声。


「何がだよ」

「だってさっきからおかしーもん。学校でなんかあった? もしかしてサユねーちゃん絡み?」

「ばっ……」


なんで分かる。この妹はホント末恐ろしい。


「あ、そうなんだねー。ルイが相談にのってあげるよー。女心は私に任せて」

「お前、まだガキだろうが」

「そんな風にいう時点でお兄ちゃんは女心分かってないよ。私、サユねーちゃん好きだもん。幸せになってほしい。だからお兄ちゃんにもっとしゃんとしてもらわないとさぁ」

「俺がダメダメみたいな言い方すんなよ!」


畜生、気にしてんのに。

どうせ俺はダメダメですよ。気を使ってくれてるサユちゃんを泣かせることしか出来ねーよ。
どうやったらサユちゃんが頼ってくれるような男になれるのか、まったくもって想像も付かない。


「……俺は男になりたい」

「女だったの、お兄ちゃん」

「違う。もっと頼りがいのあるような男になりたいんだ」

「なりなよ」

「簡単になれねーから悩んでるんだ」


ルイは、俺の背中にギュッとしがみつくと、指で部屋に行くように指示した。
イッサは珍しくついてこない。