「……違う、にーちゃん」


俺の袖の裾をつんつんとつつきながら、イッサが呟く。


「なんだ? ぼそぼそ声だと聞こえねーぞ」

「ルイ、うまく笑い話に持ってった。山田、助かったって言ってた」

「ちょ、余計なこというな! イッサ」


一瞬で真っ赤になるルイ。おい、ルイのこんなカワイイ顔、見るの初めてかも。


「ルイ。優しい」


表情を変えず、ポソリと呟くイッサに、ルイの席から箱ティッシュが飛んできた。
イッサは無言で首を傾げ、スレスレのところを箱ティッシュが通過する。


「うっさーい」

「うるさいのはあんたよ、ルイ。食事中に物投げるのはやめなさい」

「突っ込むとこはそこなのか? ママ」


夫婦の会話もマイペース。
俺の家は、双子同士が親密すぎるし、夫婦間も尻には敷かれてるけど仲はいい。どうしたって俺が一人あぶれるような構成になる。


「分かったよ。ルイはいい子だなー。これでいいんだろ! もう俺、ごちそうさま」

「あ、お兄ちゃん待ってよー」


俺が茶碗を下げて部屋に行こうとすると、後ろからルイがついてきた。

ソファに駆け上がったかと思うとそのまま背中に飛びついてくる。
ちょ、待て。もうだいぶでかいんだから、その乗り方は殺人的だ。