睨み合いのまま、しかし勝負の議論に関しては頭打ちになった時、木下が顎をさすりながらいいだした。


「ふーん。そうなのか。よし分かった! そこは俺が何とかしてやろう」

「はぁ?」


なにを誰がどうするって?
もう種目は決まってんだよ。今更選手の入れ替えとか、俺は嫌だぞ?


「そこは当日のお楽しみだ。まあ俺に任せておけ」


胸を叩いて、頼りがいのある態度で木下が言う。
いやいや、どうしてこういうどうでもいいようなことばかりアンタは本腰を入れるんだよ。


「分かりました! な、サトル」


ノリノリで頷く夏目。俺はどうにも違和感を無くせない。


「……分かったよ」


彼女を賭けることも気に入らないし、そんな何をするかも分からないような競技に託すのは不安だ。
……けど。


「ぜってぇ負けねぇからな。見てろよ! サトル」

「こっちのセリフだ」


絶対に負けたくない男ってのはこの世の中に少なくとも一人はいるらしい。

どうしても夏目にだけはサユちゃんを渡したくない。


そんなこんなで降って湧いた告白対決。
どうやら体育祭は遊びじゃ終われなさそうだ。