「懐かしいな」


あの頃俺の頭の中は、ごはんとゲームとサユちゃんと時々母さんで構成されてた。
そのくらい、サユちゃんの割合はでかかった。

この先もずっとサユちゃんと一緒にいられるって思ってたのに、別れの時は案外あっさりやってきた。
その年の3月、卒園と共にサユちゃんと会うことはすっぱりなくなってしまったのだ。

最初俺は寂しくて堪らなくて、勝手にいじけたこともある。
だけどどうしても会えないんだって分かってからは、サユちゃんのこともそれほど思い出さなくなった。

たまに、双子の保育園行事で会うこともあったけど。
また会えなくなるって思うと尻込みしてしまって、思うようには遊べなかった。

なんとなく諦めを覚えた日々が過ぎて、そのうちに双子が卒園してからは、顔を見ることすらできなくなってしまった。


思い出は風化するんだと思っていた。

どんどん新しい出会いがあって。
気の合う友達もたくさん出来て。
サユちゃんが占める割合なんて、どんどん小さくなっていくんだと。


確かに小さくはなったんだと思う。
だけど、頭の片隅からはずっと離れてくれなかった。

ふっと部屋で一人になった時。
部活中に風を感じた時。
夕焼けがとても綺麗だった時。

今の気持ちを誰かに話したいって。

そう思うときは必ずサユちゃんを思い出した。
それが恋かなんてわからないけど、ずっと忘れられなかったというのは事実だ。