「いや、サトルに協力してやるつもりだったが、お前はどうもまどろっこしいから。俺はサユが幸せになるならなんでもいいんだ。ええと、君!」
「夏目信也です」
「そうか、夏目。お前がサユを幸せにする覚悟があるなら、俺はお前に協力してやろう」
「本当ですか。絶対します。死んでもします」
アホ。
死んだら誰も幸せになんか出来ねぇよ。思いつきで話すの止めろよな。
それに、サユちゃんの前で『死ぬ』とかいうワード使ったらはっ倒すぞ。
「じゃあ俺、体育祭で格好良いとこ見せて告ります!」
高らかに宣言する夏目にイライラする。
それを煽る木下にも。
俺は机をバンと叩いて立ち上がった。
「勝手になんでも決めんなよ。お前になんか告白させるか」
「なにぃ、じゃあやっぱり勝負だ! 勝ったほうが告白するんだ。いいな!」
「いや、ちょっと待て」
俺はまだ告白する気はない……けど。
「なんだよ、怯むのか?」
夏目の挑戦的な目つきにキレた。
「んなわけ無いだろ。分かった。勝負だ」
「ちょっと待て待て。そうは言っても何で勝負する? 百メートル走だとサトルに分がありすぎるだろう」
仲裁を入れるのは木下。
畜生、余計なことに気付かさせるなよ。
「そうだよな。サトルは陸上部だもんな。ううむ、どうすれば」
「ハナから勝負なんて無理なんだよ。お前と俺は同じクラスだぞ? 一緒に出る競技は騎馬戦だけで、しかも仲間だ」
勝負するような競技は一つも無いはずだ。
先日決めた選手割を思い出して俺は答える。