翌日、教室に辿り着く前の廊下で、仁王立ちの夏目とご対面する。

なんか面倒くさそうだな、と直感で感じたので無言で後ろを振り向く。遠回りして行こう。


「ちょっと待てぇ!」

「嫌だよ。なんかお前面倒くさいこと考えてるだろう」

「なぜ俺の考えが分かる! 愛なのか? お前俺を愛しているのか」

「馬鹿なことを言うのは止めろ!」


周りの人がジロジロ見ている。こんなところでBL劇場を繰り広げるなんてまっぴらゴメンだ。


「俺は、お前に宣戦布告したいだけだ」

「はぁ?」


宣戦布告って何のだ。俺とお前は同じクラスで、体育祭では仲間だろうが。


「頭大丈夫か?」

「大丈夫だ! 俺は本気だ」

「本気だからヤバイんだろ」


気が狂ってるほうがなんぼかマシだろう。


「なんでだよ! 俺は真剣だ。本気で彼女を手に入れたいのに。お前なんなんだよ。昔の思い出持ちだしてさ、勝手に近づいてんじゃねーよ!」

「あ」


そっちか。
でもそんなのこんな廊下ででかい声で言うなよ。もしサユちゃんに聞かれたらどうするんだ。


「ちょ、夏目。もっと人目に付かないところで話そうぜ」

「うるさい。景気づけだ。いいか、俺はお前には負けん! 体育祭で勝負だ」

「はぁ?」


人差し指を突きつけてくる夏目を見ていると、怒りの神経が刺激される。

なんなんだよ、ホントコイツ。勝手に盛り上がりやがって。
俺から見れば、お前のほうが勝手にサユちゃんに近づいてんじゃねーかよ。

大体勝負ってなんだよ。
彼女がどっちを選ぶかなんて、俺達が競ったところで決まるわけねーじゃねーか。
それどころか今はどちらも選ばれない確率のほうが高いんだぞ?