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 体育祭準備は続く。
放課後、理科準備室で部活の前に赤いペンキと格闘する俺。鉛筆のラインをなぞればいいだけなのに、なぜ勝手に曲がるんだ、筆よ。


「……ヘッタクソね。中津川くん」

「もう少し優しい言い方ねぇのか、新見」


脇から覗きこんでくるのは学級委員長・新見。このソツのない女は美術も得意らしい。新見は複雑な文字のところを塗っていたはずなのに、もう終わってる。しかもキレイだ。


「ホントに思ってもいない慰め聞きたいの? 私はイヤよ。そんなの言うの。ほら、勢いが足りないから曲がって行くのよ」

「勢いか」


ええい、ままよと勢い良く書くと、確かに線からはずれるが見栄えはキレイだ。


「こんなもんか」

「上出来よ」


ポンと俺の肩を叩いて新見は別のところへ移動する。

恐ろしい女だけど、ある意味でとてつもなくさっぱりしたいい奴ではある。
男だったらさぞかしモテるだろうに、惜しいな。

まあいい。とにかく出来たことは出来た。
後はサユちゃんに確認してもらえばいいんだ。


「サユちゃ……」


彼女は扉の近くに居た。廊下にはなぜか夏目の姿が。プリント持って、さも何か聞いてますって感じで彼女との距離を詰めている。

ああもう。あいつはホントムカつく。
今学級委員関係ねーだろ。

睨んでる俺に気づいて、ニヤリと笑ってみせるのがまたムカつく。