「体育祭ですよ。真面目にやりましょう」

「赤ベコの時点でもう真面目じゃないもの。どこまでも馬鹿げたほうがいいわよ」


一応実行委員なので、軌道修正を図るもあえなく失敗に終わる。
そもそも女子三人に男が俺一人の状況で俺の意見が通るなんて思うほうが間違いだった。


「よし、じゃあこんな感じでっと。下書きは私に任せてもらえる? 色塗りからは皆手伝ってよね」


サユちゃんの呼びかけに皆で頷く。でも一人で下書き全部するのは大変じゃないのかな。


「サユちゃん大丈夫?」

「うん。大丈夫。任せて?」


心配して言ってみるけど、サユちゃんは自信ありげに笑うだけ。

大丈夫……なのかな。手伝いたいけど、はっきり言って俺は戦力になりそうにないしな。むしろ邪魔になる自信のほうがある。
美術は常に平均すれすれだ。加えて大雑把な性格が災いして綺麗な線や形を描くことは苦手ときている。


弱腰になっている俺に、サユちゃんはこっそりと耳打ちした。


「サトルくんと一緒にお絵かきするの、久し振りだね。私頑張るから」


可愛く笑う彼女は心臓に悪い。ドキドキして発作でも起こしそうだ。