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 そんなこんなで、体育祭の準備に追われることとなる。

実行委員が中心となって行うのは、全体準備の他に、団ごとに作られる看板や応援歌の作成。
といっても俺たちにそんな才能あるわけないので、看板は美術部の、応援歌は合唱部と吹奏楽部の力を借りる。

各学年四人ずついる実行委員は、分担で作業することになり、俺は看板書きの担当になった。もちろんそこは立候補だ。なんといっても美術部といえばサユちゃん。このチャンスを掴まない手はない。

 そんな訳で、早速相談がてら俺は二年二組を訪れている。


「サトルくん、実行委員なんだー」


くりっとした目を真っ直ぐ俺の方に向けて、見上げる。制服姿のサユちゃんは、私服のサユちゃんより大人っぽく見える。
日付が変わり先日の気まずさはなんとなくなりを潜めたようだ。会いに来た俺に、サユちゃんは普通に笑顔で接してくれる。


「看板ってさ、どんなの描くの?」

「んーとね。ほら玄武とか白虎とかそういう格好いい霊獣みたいなのを団のキャラクターにして書くんだよ。あ、可愛い狙いでゆるキャラとかでもいいんだけど」

「去年のサユちゃんのクラスは?」

「えっとね、スヌーピーだったから楽だった。隣のクラスなんて、龍だったから大変そうだったよー」

「サユちゃん、美術部だから今年も描くんでしょ」

「うん。私は運動関係は役に立たないから、そっちの仕事で頑張る」