「明菜が落ち着いてくれると俺も色々助かるんだよ」
ああそういうことか。
和晃は新見を落ち着かせて珠子を独占したいんだな?
気持ちはわかるが、隣の席のキツイ視線の女子を思い浮かべると甘い気分には到底ならず、どちらかと言えば背筋が冷える。
「いや、遠慮しとく。あいつにはぜひ夏目を薦めてやってくれ」
「一回明菜に言ってみたら殺されそうになったからやめとく」
和晃の顔から一瞬笑みが消える。俺も、和晃が足蹴にされている姿を想像してしまい、一瞬ゾッとする。
「それは、ご愁傷様」
「ああ、早く明菜にも春がこればいいのになー」
そんなに厄介払いがしたいのか。
一見幼なじみを思うような言葉の奥に潜む本音を知ってしまったら、なんだか逆に新見が不憫にもなるのだが。
「幼なじみなんだろ? 新見を好きになったことはないわけ?」
俺にとっては至極当然の問いかけだったが、和晃はこの世に無いものを見つめるような目つきで俺を見た。
「無い! 無い無い! マゾだろ、明菜を好きになる奴って」
「そう思うなら勧めるなよ……」
二人で委員会の教室にはいると、会議はとっくに始まっていたらしく、痛い視線にさらされながらこっそりと席についた。