*

 放課後は委員会だ。和晃を誘っていこうと探すもなかなか姿が見当たらない。

校舎内をぐるぐる回ってようやく見つけた時、和晃は昇降口の近くで珠子と話していた。彼女を壁際に寄せ、顔を近づけて内緒話でもするような姿を見ると、気軽に声はかけづらい。
そういえばあいつらって付き合ってるんだったよな。


「だからさ、一緒に帰ろうぜ。終わったらここで待ち合わせ、な?」

「うん。明菜と一緒に待ってるね」

「明菜はいいから」

「なんで? 明菜と和晃んち近所じゃん」


気の毒。

漏れ聞こえてくる会話に思わず同情する。
キョトンと小首をかしげる珠子には、全く二人きりになりたいとかそういう空気感ないけど、あいつはホントに和晃の事好きなのかな。

なおも頑張ろうとする和晃には悪いが、こっちもタイムアップだ。
いま来たような顔で大声を出す。


「おーい、和晃いるかー?」

「えっ。あっ。サトル」


和晃はバッと珠子から離れると、顔を真赤にしながら手を上下に動かしてる。
うん、明らかに何かあったみたいな感じだから止めろよ。


「委員会。そろそろ行かねぇ?」

「あ。え? そんな時間か」

「あー、あたしも美化委員会行かなきゃ! じゃあねー」


あっさりと行ってしまう珠子に、和晃は肩を落とす。


……頑張れ、和晃。
俺は応援の意味も込めて和晃の肩をポンと叩いた。


「なんだよ」


不愉快そうに和晃は俺の手を振り払う。