「昔はね。間違えられたこともあったらしいよ」
「分かる。可愛かったもん」
楽しそうにサユちゃんが話してる。こんな風に二人きりで話すのはかなり嬉しい……んだけど、なんか少し違和感がある。なんだろうこれは。
「サトルくん、覚えてないかもしれないけど。天使のラビィって絵本があって。それに出てくるカピィみたいだなって思ってたの」
「俺もサユちゃん、ラビィみたいって思ってたよ」
「覚えてた?」
覚えてる。何かに引っ張られているように一気に記憶が蘇る。
……けど、なんだか心はスッキリしない。
目の前にサユちゃんがいるのに、なんでこんな遠い感じがするんだろう。
さっきから、話に出てくるのは保育園児の俺ばかり。
俺は今サユちゃんの目の前にいるのに。
高校生になって、背もサユちゃんを追い越した。手も足も、君よりずっと大きい。
今の俺なら、サユちゃんが泣いた時に一緒に泣くんじゃなくて別の守り方が出来るかも知れないのに。
なんで君の目に映る俺は、小さい少年のまんまなんだ?
「ねぇ、サトルくん」
笑って思い出話を続ける彼女の手に自分の手をのばした。そっと触れると驚いたように俺を見返す。