「だ、だから。私お茶の準備するね」
「うん。ありがと」
……なんか、逃げられた?
今の動き、かなりぎこちなかった感じがするのだけど。
気にはなったけれど、追求する勇気もなく、俺はトイレを済ませてチビ達を呼びに行った。
「サイジ、イッサにルイ、サユちゃんがお茶にしようって」
「これ終わったら行く」
サイジはコントローラーを持ったまま顔も動かさずに返事をする。
「サユちゃん、やり過ぎだって怒ってたぞ。そろそろ止めろよ」
「ねーちゃんは、いっつもそうなんだよー。でもサトル兄ちゃんならわかるだろ? こんな途中でやめられないよな!」
「まあ、わかるけどさ」
でも、俺ももうそこそこでかいので、サユちゃんがサイジを心配していることくらいは理解できる。
「でもサイジ、多分メガネ似合わねぇぞ。モテたかったら目は悪くしないほうがいいんじゃね?」
「うっ」
一瞬動きが止まり、サイジが動かしていたキャラクターは敵の攻撃を受けた。
「ああああ! もう!」
癇癪を起こしたように、頭をかきむしる。さすが末っ子。小さい頃から物分かりの良かったサユちゃんとは違ってワガママだな。
「お兄ちゃん、先に行っててよ。後で私が二人共連れてく」
呆れたようにサイジの頭を叩くルイにそう言われて、俺は先にリビングに向かった。紅茶のいい香りがしている。