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「ちょっとトイレ行ってくる」


三人のチビ達にそう告げてサイジの部屋を出る。
きっと隣の部屋がサユちゃんの部屋なんだろう。とはいえ、声をかけるのもな。
廊下で悩みつつ、まずは本当にトイレを探す。
リビングに出るとサユちゃんがテレビを見ていた。


「あ、サユちゃん」

「あれ、サトルくん。どうしたの」


サユちゃんはクッションを抱えてソファに座っていた。声をかけてくれた割には、視線はチラチラとテレビの方に向いている。


「ごめん、サユちゃん。トイレどこかな」

「あ、そっち。そこの扉出て右」


サユちゃんはパタパタと動くと扉のところまで連れてきてくれた。

頭一つ分小さい彼女を上から眺めると、つむじと柔らかそうな頬が見える。
なかなか学校ではなれない至近距離に、自然にニヤニヤしてしまう。


「ねぇ、サイちゃんたちずっとゲームしてるの?」

「うん。俺もしてた」

「そろそろ止めないと目が悪くなるよ。サトルくんちからもらったお菓子でお茶にしよう」

「うん。じゃあ後で声かけてくるよ」


お母さんみたいな口調でサユちゃんが言う。
そういえば、おじさんとおばさんの姿が見えないな。


「おじさんたちは?」

「買い出しに行った。うちは共働きだから週末に買い込むの。サトルくんちもそうじゃない?」

「ああそうだね。で、俺がチビ達の見張りをしてろって言われる」

「そうそう! 私も」


お、ちょっと会話が盛り上がってきた。
嬉しくなって彼女との距離を一歩詰めると、サユちゃんは一瞬動きを止めて目を逸らした。