入学して一ヶ月が経過した。なんとなく生活リズムも安定し、俺は部活に精を出していた。


「ただいまー」


土曜は部活の練習にだけ学校に行く。今日のグラウンド使用は午前だけだったので、颯と昼飯を食ってから帰ってきた。すると双子が揃って玄関にいる。


「おかえりお兄ちゃん」

「……おかえり」

「ん? ただいま」


珍しい。普段出迎えなんてしないくせに。

双子のイッサとルイは男女だからかそれほど顔は似ていない。性格も反対。背丈だけがいつもピタリと一緒だ。


「……サイジがにーちゃんに会いたいって」

「サイジが?」


サイジとは、サユちゃんの弟だ。
モゴモゴとしか話さない弟の口元に耳を寄せると、逆の耳に妹のでかい声が入ってくる。


「ほらーお兄ちゃん、春休みにサイジくんとゲームしたじゃん。またやりたいんだって。明日部活あるの?
無いなら一緒に遊びに行かない?」

「遊びに? サイジのところに?」

「うん。それともサイジくんに来てもらった方がいい? でもあのゲーム、家にないんだよねー」


サイジの家に行くイコールサユちゃんの家に行く、だ。
願ってもないチャンスじゃん?

だって、学校じゃ一人のサユちゃんなんて捕まえられない。
いつだって友達といるか木下といるかで。
そう木下と……ああほんとムカつく。
あのスパルタ顧問め。


「部活……明日は自主トレだから、午前中にランニングでれば、午後からなら行ける」

「お母さんに車で送っていってもらおうよ」

「いや、たまには電車とかで行こう。俺がお前たちに付き添ってやる」

「えーめんどいよ」

「お前たちも自力で動くことを怠るな!」


なんて、格好良いことを言ってみたが、実際は母さんに見られたら何を言われるか分からないから電車で行きたい。思春期の青少年としては、恋愛事には顔出されたくねーんだよ。