「そうもいかないわよ。ルイは女の子なんだから。もし片付かなかったらアンタとイッサが一緒の部屋になるのよ。それでもいいの?」
「はぁ? 何でだよ。俺四月から高校生だぞ。プライベート重視! 思春期なめんな」
「イヤなんだったら、手伝えって言ってんのよ」
俺の部屋のゲーム用の小さなテレビに足が乗る。
こえーから、かーちゃん。
体は小さいくせにどうしてそう凄みがあるんだよ。
「分かった、分かった、分かりました!」
「返事は一回でいいわー」
なんだかんだと言いくるめられ、俺は重い腰を上げる。
俺の7つ離れた弟妹は男女の双子だ。無口な弟のほうがイッサ、鋭いツッコミが得意な妹がルイ。
俺はサトルっていう平凡な名前なのに、なんで双子には変な名前つけたんだ? って聞いたら、しりとりにしたかったの、と返された。
サトル→ルイ→イッサで、再び俺まで戻るらしい。
俺はその時に悟った。
母さんにまっとうな思考を求めるのは間違っているのだと。
ちらりと母親を見ると、鼻息荒く物置部屋へと向かっている。
つまりは、母さんが言い出したら他の誰がまっとうな意見を言ったところで無駄ってわけだ。