結果として多数決となり、夏目と新見が学級委員となる。

ビクビクする夏目とは対照的に、憮然とした表情で教壇に立った新見は、バンと机を叩いて一喝した。


「私に決めたのはアンタたちだってこと、忘れないでくださいね。さあ、私はもたもたされるのは嫌いだからね。さっさと残りの委員を決めましょう」

「あー、明菜カッコイイ!」


騒ぎ出すのは雨宮珠子だ。


「うるさい、珠子。アンタ美化委員やりなさい」

「えー!」

「他の委員も、まずは希望を言いなさい。余った奴らから順に面倒くさい役につけるわよ」


恐ろしい勢いで仕切る新見。夏目はビビりまくって大した役には立っていない。

しかしHR開始三十分ですべての委員が決定した。その内の十分は学級委員長を選出している時間だ。

委員選出と言うのは今まで中学でもあったが、こんなに早く終わったのは初めてのような気がする。
新見という女の恐ろしさを垣間見たような気がした。


「けっ、中津川は体育祭実行委員かよ。無難なところをとったな」

「ああなったら速攻でやりたいもん言ったほうが勝ちじゃん」


席に戻ってきた夏目が、俺の背中に「の」の字を書きながらグチグチとうるさい。つか、背中が気持ちわりぃ。
ああもう、いちいちメーワク。この男。


「でも体育祭っていつだっけ」

「この学校は早いよ。五月末にやるから。すぐ忙しくなるぜ、ざまーみろ」

「なんでいちいち喧嘩売ってくんだよ」


小突きあいをしながら夏目と話していると、隣の席の新見が下敷きをバンと机に叩きつける。


「……あんたら、うるさい」


その睨みに背筋がぞっとして体が固まる。まるでメドゥーサに睨まれたかのようだ。


「す、スンマセン」

「……こえぇぇぇ」


この強烈な女がクラス委員である限り、きっとこのクラスでは問題は起きないだろう。