*
家に戻るともう和晃のお母さんはいなかった。母親は果敢にもひき肉無しで夕飯作りを始めていたらしい。
「はい、ひき肉」
「ありがとう。明菜、手伝ってよ」
「んー。いいけど」
誘われるまま台所に立つ。
キャベツを刻む包丁のリズムが耳に心地いい。
「これ、混ぜればいいのね?」
ハンバーグの材料をすべて入れ、手でこねる。混ぜているうちに触感が変わるタイミングがある。それぞれバラバラだった素材が、融合したなっていうベタツキ感。それを感じたら今度は丸める。料理って案外感覚的なものだなと思うのだ。
「はい、これでいい?」
「さすが明菜。上手ね」
「宿題やるから行っていい?」
「いいわよー」
母親は上機嫌で、今度はフライパンを取り出した。
すぐ出来てしまいそうだから、さっさと宿題に取り掛かろう。
リビングを横切ろうとした時、薄いピンクの折り鶴が目についた。
さっきの薄い折り紙で折られたものらしく、どことなく透けて見える。
普通の折り紙と違ってとても華奢で綺麗だ。
「それ、綺麗でしょう? 超薄おりがみって言ってね、重ねても綺麗なのよ?」
「へぇ」
「とりあえず鶴を作ってみたんだけど、いいでしょう。すごく素敵」
夢見るような瞳の母さん。
そうね。とても綺麗。
どことなく葉山先輩を思い起こさせる色で、胸がきゅっと詰まる。
中津川くんの好きな人。優しくて、小さくて可愛くて、笑ってばかりいる人。
どうして男はあんな女の子ばかり好きなんだろう。
柄にもない思考に、頭を振って階段を駆け上がる。
春色の鶴が嫌いになりそうだ。
家に戻るともう和晃のお母さんはいなかった。母親は果敢にもひき肉無しで夕飯作りを始めていたらしい。
「はい、ひき肉」
「ありがとう。明菜、手伝ってよ」
「んー。いいけど」
誘われるまま台所に立つ。
キャベツを刻む包丁のリズムが耳に心地いい。
「これ、混ぜればいいのね?」
ハンバーグの材料をすべて入れ、手でこねる。混ぜているうちに触感が変わるタイミングがある。それぞれバラバラだった素材が、融合したなっていうベタツキ感。それを感じたら今度は丸める。料理って案外感覚的なものだなと思うのだ。
「はい、これでいい?」
「さすが明菜。上手ね」
「宿題やるから行っていい?」
「いいわよー」
母親は上機嫌で、今度はフライパンを取り出した。
すぐ出来てしまいそうだから、さっさと宿題に取り掛かろう。
リビングを横切ろうとした時、薄いピンクの折り鶴が目についた。
さっきの薄い折り紙で折られたものらしく、どことなく透けて見える。
普通の折り紙と違ってとても華奢で綺麗だ。
「それ、綺麗でしょう? 超薄おりがみって言ってね、重ねても綺麗なのよ?」
「へぇ」
「とりあえず鶴を作ってみたんだけど、いいでしょう。すごく素敵」
夢見るような瞳の母さん。
そうね。とても綺麗。
どことなく葉山先輩を思い起こさせる色で、胸がきゅっと詰まる。
中津川くんの好きな人。優しくて、小さくて可愛くて、笑ってばかりいる人。
どうして男はあんな女の子ばかり好きなんだろう。
柄にもない思考に、頭を振って階段を駆け上がる。
春色の鶴が嫌いになりそうだ。