苛立ちに任せて、回し蹴りを一発食らわす。
ロングスカートのせいで足が上がらず、お尻を狙った一撃はふくらはぎと激突した。


「……いってぇ! 足はねぇだろ。俺、陸上部員!」

「ごめん。本当は尻を狙うつもりだったの。思ったより足が上がらなかったわ」

「お詫びは?」

「セクハラの仕返しがこれだけで済んでるんだから、アンタは感謝すべきなのよ」


何を言っても言い返してくる口の回る男。
相手をしているのも疲れてきた。


「まあいいわ、私帰る」

「送ろうか、新見」

「結構。さっさと帰りなさいよ。ストーカーしたら訴えるわよ」

「そう言うなよ。ほら、荷物持ってやるから」


彼はスッと私の手からひき肉の入ったビニール袋を奪う。
気を利かせたつもりでしょうけど、持てるレベルの荷物を持たれるのは逆に侮辱だ。私はすぐさま背中を平手で打ち、奪い返した。


「頼んでもいないことはしないで。泥棒で訴えるわよ」

「新見にかかると俺は犯罪者だな」

「アンタの行動に犯罪要素があるんだから仕方ないでしょう。じゃあね」


長く話していると疲れる。逃げ出すように小走りで家まで帰った。