商店街のある通りまで出ると、下校中の同級生と出会う率が高くなる。
学校が家から近いのはいいけど、私服に着替えてからまで出会ってしまうのが少し嫌だ。
かと言って制服は硬苦しくて好きじゃない。脱げるものならすぐにでも脱ぎたいのだ。

 まあでも、今日は委員会があって遅くなったから、大抵のやつは先に帰ってしまっているはず。出会うとしても部活帰りの連中は集団で騒いで帰るから、気づかれないだろう。


 商店街にはスーパーもあるけれど、買うのが肉だけなら折角なので肉屋に行こう。今時、肉だけで商売しようという心意気が好きだ。
私が行くと必ずおまけをくれるのも好きなところ。


「おじさん、合いびき肉五百グラムね」

「おう、明菜ちゃん、お使いかい?」

「そう。今時泣かすでしょう」

「泣かす泣かす。おれっちのコロッケでも食っていきな」

「ありがと」


おまけはいつもホクホクのコロッケだ。おばさんが奥で揚げてる。
生肉を売っている店からこの匂いが漂ってくるのもなんだか違和感があるけど、そこがまた面白い。
おじさん曰く、これがかなりの売上になるんだそう。


「今度母さんにコロッケ一杯買ってきてって言っとくね」

「はは。ありがとうよ」


私は小さい頃からこの商店街を練り歩くのが好きだった。
殺伐とした世の中だけど、こうした狭い地域にはちゃんと温かさが残っている。
母親が専業主婦で地域密着型だったってのもあるけれど、皆私のことを幼い頃から知っている。
私がどれだけ暴走しようと、彼らは私を腫れ物のようには扱わない。

“また明菜ちゃんがやんちゃした”

そう言って笑ってもらえることに、人はどれだけ救われるんだろうって思う。