「じゃあ、片付けるね」
「絵は? どこか運ぶの?」
「それは朝一番で先生が運んでくれるから大丈夫」
パタパタと絵の具を片付けていくサユ。俺も手伝おうと試みるも、「私がやったほうが早いから」と言われてしまうとそれ以上手も出せない。
仕方なく、俺の鞄とサユの鞄を持って、彼女の片付けが終わるのを待った。
「はい、お待たせ。後は職員室寄って帰ろ?」
「うん。それにしても、絵を描いてるサユは格好良いね」
「え」
その途端、サユの顔が一気に真っ赤になった。
え? なんだよ、この好反応。
「ホント?」
「う、うん。格好いいって思って見てた」
腕を掴んで食い入るように見られて、俺の心臓は死にそうなほど早鐘を打ってる。
ヤバイ、そんなに近づかれたら俺の理性ってやつが崩壊しそうだ。
「……嬉しい!」
サユは満面の笑み。
あ、もうダメだ。理性よさらば。ごきげんよう、男の本能。
「好き」
そう告げて、彼女の唇にほんの一瞬だけ触れる。
目を開けると、サユは真っ赤な顔のまま固まっている。
「い、今」
「ごめん。可愛かったからつい」
「き、キス、した」
「うん」
プルプルと震える彼女は、間違いなくファーストキスだったのだろう。
女は雰囲気にこだわるもんな。
ああやっぱり、もっといい場所ですればよかったか。