そしてやってきたのは葉山家。玄関先でと言った母さんを制して、おばさんは中へいれてくれた。


「久しぶりに中津川さんに会えるなんて嬉しいわ」

「でも、今回は本当にごめんなさい? サユちゃんに怪我させるなんてねぇ。男の風上にも置けないわよねぇ」


母よ。自分でも気にしてるんだから俺の心をえぐるのはやめてくれ。


「大丈夫です。サトルくんのせいじゃないの」


サユはおばさんの隣に座り、一生懸命弁明してくれた。視線だけでごめんなと伝えると了解したと言うように微笑む。


「折角だから頂いたお菓子、皆で食べましょう? サユ、お茶入れるの手伝ってくれる?」

「うん」

「葉山さん、いいのよ。お構いなく」


結局、謝罪と言っても最初のそれだけで、母親同士は昔を懐かしんで語らい始めた。
なげーよ。夕食時に失礼だろ。サイジなんかまだ食ってんだぞ。
冷たい視線で母さんを睨んでみたが全く届かない。


「そうよ、あの時のサトルったらもう!」

「でもサトルくんがいてサユとっても嬉しそうだったのよ」


話題は主に俺達の保育園時代の話。
思い出話に花が咲く……のはいいけど、聞かされてる俺達はたまったもんじゃないんだよ。恥ずかしいんだよ!!


「何だよ、この羞恥プレイ」

「お母さんたち、昔のことはもういいじゃない……」


俺達は顔を真赤にしながら、それでも謝罪にきたという名目上そこから逃げ出すわけにもいかず、まるで針のむしろに座っている気分だった。


「サトルにーちゃん、俺と遊ぼうー!」

「サイジ。会いたかったぞ!」


ようやく夕食を終え、俺の背中に乗っかってきたサイジが、天使のように見えた。