そして家に帰ると、待ち構えていた母親に車に乗せられた。


「なんだよ」

「なんだじゃないわよ、葉山さんの家に謝りに行きましょ?」

「謝るって何を」

「怪我させたことよ。一応昨日電話で謝っておいたけど、菓子折り持って挨拶に行くのが礼儀よ」

「でも……俺、おじさんにちゃんと顔見て謝ったけど」


今更な気がするのは俺だけか。
それに、ついさっき彼女を送って行ったばかりですけど。


「親には親の付き合いがあります。普段ルイとイッサがお世話になってるのもあるし、久しぶりにちゃんとご挨拶しないと」

「おかーさん、私も行きたい」


ノリノリで窓から声をかけてくるのがルイ。遊びに行くんじゃねーんだぞ。


「お前は来んな!」

「なんでよー。お兄ちゃんのいけず!」

「そんな言葉どこで覚えた!」


いかん。このままだと余計なお荷物二人がついてくる。
それくらいならさっさと出かけた方がいい。


「行こう、母さん」

「ようやく納得した? 馬鹿息子」

「納得した。さあ早く」


俺が車に乗り込むのと同時に、玄関からルイとイッサが出てくる。


「ちょっと、お母さん!」

「いい子で留守番してなさい。イッサ頼むわよ」


母さんは容赦なくアクセルを踏み、道路の後方ではルイが怒りでぴょんぴょん飛び跳ねているのが見えた。
その後でしょげかえるルイをイッサがいつもの調子でさり気なく慰めるんだろう。なんか目に浮かぶようだな。


「あいつらまで来たらうるせぇだけだ」

「まあでも、アンタのこと心配してるのよ。あの子たちも」

「そうかな。ルイは面白がってるだけじゃ……」

「分かってないのね。ルイが一番ブラコンじゃないの。イッサはルイの手助けをしてるだけよ」


サラリと言い放つ母。
どうしてアンタ普段あんなに放任なのに変なところ鋭いんだ。


「……そりゃどうも?」

「アンタが楽しそうにしてればあの子達も楽しいのよ」


クスリと笑われて、気恥ずかしくなって窓の外を見た。
見透かされるのは、親にだったらそう悪くもないな、なんて思いながら。