「えっ、イヤあの」
「だったら私も気にしないことにします。今まで色々すみませんでした」
「頭あげて。仲良くしよ、新見さん」
サユは笑顔で右手を差し出し、そこに包帯がついてることに気付いて、慌てて引っ込めた。
「ごめん、これはホントに気にしないで。あの、握手したいなぁってだけだったんだけど」
「中津川くん大事にしてあげてください。でないと私も報われないし。ライバルってところを差し引いたら、私葉山先輩嫌いでもないです。じゃあ、帰ります」
新見は笑ってサユの腕をポンと叩き、俺の背中をどついて行った。
「……ホントに、新見さんって格好いいね」
「あー、今颯が夢中になってる」
「颯くんって、陸上部の仲いい子?」
「そうそう」
「うまくいきそう?」
「どうだろ。新見の方にその気なさそう」
ははっと笑うとサユは少し困ったような顔をした。
「私も格好いい女の子にならなきゃ」
「ん?」
「新見さんに、サトルくんに合わない女の子だなんて思われたくないもん」
いや、それ逆だろ?
もてもてのサユに、なんで俺っていうのが一般の意見だから。
「サユはそのままでいいよ」
「良くないの。私頑張る」
「……じゃあ、俺も頑張る?」
よくわからないけど、現状に満足していてはいけないんだろう。
これから先もずっと一緒にいるために、俺もいい男になろう。
そして君を傷つけるものから必ず守ってあげる。
そのために、自分が彼女を傷つけないためにも、まずはこの嫉妬グセを無くすよう努力しなければ。