「サトル! お前いいこというじゃねーか。そうだな、個性ってやつだよな。いやぁ、教師はついつい数字で判断しちまうからなぁ」
「は?」
なぜ感心されるのかもわからない。
そう思っていたら、サユが極上の笑みを浮かべて俺の隣にやってきた。
「やっぱりサトルくんだ」
「え?」
「そうよね。アンタ馬鹿だけど、そういうところがいいのよね」
新見がウンウン頷いていると、中村が急に立ち上がり、新見の手から携帯をひったくった。
「あ、ちょっと、返しなさいよ」
「これは私の携帯よっ」
そのまま、中村が走って逃げる。
「アンタ、その写真で何する気? ちょっと先生、追っかけてよ」
「え? 俺か?」
「こういう時こそ、陸上部顧問の足を見せなさいよ」
新見にけしかけられ、木下は中村を追っていった。
あれこそ噂になるんじゃないか?
木下、女生徒を追っかけまわす、とか言われて。
気の毒。
あまり本気でも無くそう思った。