「手、まだ腫れてる?」
「うん。一応シップはしてる。でも、ただの捻挫だし、やっぱりちょっと放課後描いてみようかなって思ってる」
「じゃあ、部活の前に俺も顔出すよ」
「いいよ。大丈夫」
「俺が見たいだけ」
階段のところでサユを別れ、俺は教室に入る。
「はよ」
一応隣の席だし声はかけてみたが、中村はものの見事にシカトだ。性格悪いなぁ、コイツ。
「……昨日の」
「ん?」
「昨日の噂、本当なのかしら」
しかも気にしてやがるのか。お前、今まで自分がしてきたことを棚に上げてメンタル弱すぎるぞ。
「さあ、知らねぇ」
中村を励ましてやる義理はない。
俺はつっけんどんに返事をした。
*
放課後、部活が始まる前に美術室に行こうとすると、後ろから新見がついてきた。
「中津川くん。葉山先輩知らない?」
「サユなら多分美術室にいると思うぜ? 俺今から見に行くところだけど」
「じゃあ一緒に行くわ。はやいとこ謝ってスッキリしたい」
コイツはコイツで、無駄に責任を感じているらしい。
「ところで颯とどうなった」
「どうもこうもないわ。あの人うるさい。つか、強引なのよ」
「お前に強引と言わしめるのはスゲーと俺は思う」
「どういう意味よ」
言い合いをしながら三階まで上ると、何故か中村の姿が見えた。
美術室を覗きこんで、携帯をかざしている。