「手、まだ腫れてる?」

「うん。一応シップはしてる。でも、ただの捻挫だし、やっぱりちょっと放課後描いてみようかなって思ってる」

「じゃあ、部活の前に俺も顔出すよ」

「いいよ。大丈夫」

「俺が見たいだけ」


階段のところでサユを別れ、俺は教室に入る。


「はよ」


一応隣の席だし声はかけてみたが、中村はものの見事にシカトだ。性格悪いなぁ、コイツ。


「……昨日の」

「ん?」

「昨日の噂、本当なのかしら」


しかも気にしてやがるのか。お前、今まで自分がしてきたことを棚に上げてメンタル弱すぎるぞ。


「さあ、知らねぇ」


中村を励ましてやる義理はない。
俺はつっけんどんに返事をした。





 放課後、部活が始まる前に美術室に行こうとすると、後ろから新見がついてきた。


「中津川くん。葉山先輩知らない?」

「サユなら多分美術室にいると思うぜ? 俺今から見に行くところだけど」

「じゃあ一緒に行くわ。はやいとこ謝ってスッキリしたい」


コイツはコイツで、無駄に責任を感じているらしい。


「ところで颯とどうなった」

「どうもこうもないわ。あの人うるさい。つか、強引なのよ」

「お前に強引と言わしめるのはスゲーと俺は思う」

「どういう意味よ」


言い合いをしながら三階まで上ると、何故か中村の姿が見えた。
美術室を覗きこんで、携帯をかざしている。