「……ああ、やっぱりサユちゃん先輩、年上の男が好きなのかぁ」


呆然と見つめる俺の背後から、そんな呟きが聞こえてくる。
ぎょっとして振り向くと、そこには苦い顔をした夏目信也がいた。


「うわぁ、夏目。どうやって撒いてきた。あいつら」

「撒いてねぇ。お前を連れていくから校門で待ってろって言ってきただけ」

「俺は行かねぇって行ってんだろ」


俺と夏目が騒ぎ出すと、周りの視線が徐々に集まってくる。
勘弁してくれ、こっ恥ずかしい。

しかし、そのざわめきが功を奏して、サユちゃんがこっちを向いた。


「さ、サトルくん?」


駈け出したサユちゃんが呼んだのは、俺の名前だ。サラサラの髪がトップ部分だけ後ろで結ばれている。
昔の面影があるくしゃっとした笑顔。顔見るだけで胸があったかくなって、俺の口の端が勝手ににやけていく。

ああやっぱり、サユちゃんは可愛い。

俺は何も考えずに手を伸ばした。しかし、先輩の「あら」という呟きに正気に返る。
いかんいかん、いきなり抱擁とかしたらドン引かれる。


「サユちゃん」

「サユちゃんせんぱーい! 俺ですよ! 夏目信也です」

「あああああ! 信也くんだー!」


俺に向かってくる途中でサユちゃんは少し隣に向きを変えた。


ああああああ!
せっかくの再会シーンが!
なんてことしやがる夏目信也!