「葉山先輩も怪我したんだってね。私、謝ってこなくちゃ」
「サユはお前のせいだとは思っていない思うけど」
「あっちが思ってなくても私が思うんだから謝らなきゃでしょ。あーそれにしても中村さんがムカつくわ。何か仕返しを考えなきゃ」
「それ、本気でやるなら俺も手伝う」
中村にはホントムカついてんだよ。まあ昨日の颯の一喝が効いているなら、しばらくは大人しくしているとは思うけれども。
「ところでさ、アンタの友達なんなのよ」
「颯のことか?」
「そう、スッゲうるさいんですけど」
「どんな風に?」
「あ、いた。新見ー!」
噂をすれば、さわやかな笑顔を見せた颯が昇降口で手を振る。
なんだあの営業スマイル。いつもはどちらかと言えば仏頂面をしている癖に。
「うわ来た。ごめん、中津川くん。私逃げるわ」
「ちょ、新見待てよ。なぁ、今度一緒にカラオケ行こうぜ」
「男とふたりでカラオケなんて危険なところに誰が行くのよ」
「じゃあどこがいい? 遊園地か? お化け屋敷とか行こうか。怖かったら俺にひっついていいんだぜ?」
「お化けよりアンタが怖いわ」
言い合いながら歩いて行く二人の姿に、周りの皆の視線がさらわれる。
颯のファンなのか、女子の集団が苦々しい顔で見ているのがまた心配というか。
大丈夫なのか、あれ。
つか、あんなに女に擦り寄っていく颯を見るのは初めてだけど、本気なったらアイツってああなのか?