ラジオが流れる車内。おじさんの手がハンドルを滑らす。肩幅が広くて、手も多分まだ俺より大きい。造作の良い顔は年をとっても変わらないらしく、五十代のおっさんと言ってもモテるんだろうなぁと思う。

いつになったらおじさんに届くだろう。
サユの一番になるにはどうしたらいいんだ。


「……なぁ、サトルくん」

「はい」

「サユは学校ではどうだい?」

「ちょっとお父さん、先生に聞くようなことサトルくんに聞いてどうするの」


サユは恥ずかしそうに話をはぐらかそうとするけれど、俺は真剣に考えた。


「成績優秀で人望もあって、皆から頼りにされてます」

「そうか」

「だから俺は……頼られるようになりたいって思ってます」

「サトルくんってば」


サユは困ったような顔。バックミラー越しに、おじさんが笑う。


「サユは頼り方がわからないんだよ」

「え?」

「ずっと、しっかりものでいなきゃいけなかったから」

「……おじさん」

「気長に構えてやってくれよ。少なくともサトルくんには気を許していると思うよ、俺は」

「ちょっとやめてよ。恥ずかしいってば」


俺達の会話に、サユが顔を隠しながら首を振る。
確かに、何話してんだ俺達って感じだけど。でもなんか、すごく深い意味があるような気がする。


「サユもさ。大きいマルには小さいマルは入るんだぞ? 自分がそういう年頃になったことくらいは自覚しろよ」

「……お父さん」