「私、サトルくんの言葉には、泣いたり傷ついたり嬉しくなったりする。すごく沢山の感情が溢れ出てくるの。小さい頃からずっとそう。再会する前も後も、私はずっとサトルくんに守ってもらってる。サトルくんのお陰で、私にはちゃんと感情もあって、ちゃんと人と付き合えるってそう思えるの」
「サユちゃん」
「だからサトルくんはずっと、……私の特別だったんだよ」
彼女の手が伸びて、俺の服の裾を掴む。それが小刻みに震えているから、俺は堪らなくなって彼女を抱きしめた。
「きゃ」
サユちゃんは明らかにたじろいでいるけど、離せない。離したくない。
「俺、サユちゃ……サユが好きだ。自分が情けなくなっても、離れたくないくらい好きだ」
力を込めながら耳元に囁く。心なしか彼女の耳が赤い。首筋も少し汗ばんでいるみたいだ。
しばらくしておずおずと俺の背中に彼女の手が回ってきた。
「サトルくんは情けなくなんかないよ」
「でも怪我させたよ」
「でも、治ったら頑張ろうって思わせてくれるもん」
母さんが言っていたのはこういうことか、と思う。
俺がこだわってきたことなんて、本当に些細な事だ。
ダメなところにいつまでもこだわっていたって、何にも生み出さない。
そうじゃなくて、出来るところでもっともっと頑張ればいいんだ。
君を勇気づける方法は、いくらだって転がってるじゃないか。