二階は二年生の教室がある。
勢いよく駆け上がってみたが、上級生の中に入ってしまうと妙に心細くなるもんだ。

サユちゃんはどこだろう。
何組なのかも知らない。よくよく考えると、サユちゃんの事は知っているようで何も知らないんだ。

キョロキョロと歩きながら各教室を覗き見るも、上級生の視線が痛くてじっくり見れない。俺は途方に暮れつつも廊下を行ったり来たりしていた。


「誰か探してる?」


俺の不審な動きに気づいたのか、二年二組の前にいた女生徒がをかけてくれた。


「あの、二年の葉山サユ先輩は何組ですか?」

「ああ。サユ? あ、あなた、あれだ。さっきサユが指差して騒いでいた子」


そう言われて、彼女がサユちゃんの口を塞いでいた先輩だったことに気づく。

ほーら、夏目。
サユちゃんが見つけてくれたのは俺だったろ?

勝ち誇った気分も、みせつける相手がいないとむなしいだけなのだが。


「一年の中津川です。で、あの、サユちゃんは」

「あー、サユならあそこよ。ほら先生といちゃついてる」

「いちゃつ……」


その先輩が指差した方を見ると、確かにそこにはサユちゃんがいた。
背の高い、いかにも体育教師ですって感じの赤いジャージを着込んだ快活そうな男の周りで、背中を叩いたり髪を触ったりしている。楽しそうに笑い合うその姿はなんだか恋人同士のようにさえ見えた。

おいおいおいおい。
あれって教師と生徒の距離か? 違うだろ?