家に帰ると、玄関には家族が勢揃いしていた。四人分の視線を一斉に浴びると、どこもおかしくないけど挙動不審になってしまう。


「なんだ、怪我してないじゃん。心配して損した。行こ、テレビはじまってるよ、イッサ」


まずルイが俺の全身をくまなく見た後、呆れたように言ってイッサを引っ張っていく。


「心配したぞ。大丈夫か? 具合は悪くないか?」


優しい言葉をかけてくれたのは父さん。


「とりあえず足じゃないから大丈夫よ。走れるわ」


あっさりしたものなのが母さんだ。


「……さっき、新見さんって子がお母さんと一緒に来たわよ。怪我させてごめんなさいって」

「新見は悪くないんだ。俺が、……彼女が怒っても仕方ないようなことをしただけで」

「そう。私もそうだろうとは思ったわ。よっぽどじゃなきゃ女の子が怒ったからって蹴ったりしないわよ」


いや、新見は普段から蹴って来たり上履きを投げたりしてくるけれども。


「それに、実際サトルは怪我なんかしてないみたいだしね」


そう言いながら、俺に彼女の母親が持ってきたというお菓子を見せる。


「頂いたから、明日お礼を言いなさい。……まあご飯を食べなさいよ」

「うん」


俺は若干落ち込んだまま、食卓についた。
いつものように大盛りに盛られるご飯に、ゆっくりと手をつける。

人間って、どうして落ち込んでいても腹が減るんだろう。最初はあんまり食う気になれなかったのに、結局あっという間に平らげてしまった。