「……俺、なんで年下なんでしょう」

「は?」

「さっきもだけど。サユちゃんは、必ず俺のことをかばうんだ。俺はそんなに頼りないんでしょうか」


おじさん相手に弱音吐いてどうする。
だけど、彼女の心配そうな視線が頭から消えない。
俺が守りたいのに、実際はサユちゃんに守られてばかりだなんて。


「はっ……はは」


頭上から笑い声がする。
未だに俺より少し背が高いおじさんが、こらえきれなくなったように笑い出す。


「おじさん?」

「いや、はは。サトルくんは、あんまり変わらないな」

「失礼ですよ!」

「昔、サユを泣かせたって言って泣いたことあるだろう。あの時と同じ顔してる」

「ああもう! 昔のことは忘れてください!」


やめろよ、恥ずかしい。思い出したくない黒歴史だよ。
大人って、どうしてこう思春期には触れてほしくないような過去を、平気で暴露するんだよ!


「はは。サユが君をかばうのは別に年下だからじゃないと思うよ」

「でも」

「俺にはむかってくることなんか滅多にないんだ。そのくらい君が大事なんだろう」


それは新見も言ってた。
サユちゃんの気持ちはそりゃあ嬉しい。だけど俺はそれが情けない。


「君はそのままでいいよ。サユは、きっとそういうところに安心するんだろう」

「……でも俺は、大人になりたいです。おじさんみたいに」

「俺みたいになっても、サユは惚れないよ。俺とサユはどちらかと言えば似たもの同士なんだ。だからサユの気持ちはわかる。君は自分の良さがなんなのか考えたほうが良い。若いんだから沢山迷えばいいよ。でも、後悔はするなよ」


ポンと肩を叩いて、おじさんは笑った。


「はい」


俺は頷いて、そのまま駅の方へときた道を戻った。

駅まで着いた頃、サユちゃんからメールが入る。

【送ってくれてありがとう。また明日ね】

気を使ってくれたんだろうなと思うと、無性に落ち込んだ。