そして現在、俺はサユちゃんの住んでいるマンションの前にいる。
目の前には不機嫌そうな顔をしたおじさん。サユちゃんは気まずげに俺とおじさんを交互に見る。
ああもう。こんな日に限って帰りが早いってどういうことだよ。


「送ってきてくれたんだね。ありがとう」

「は、はい」


無表情のおじさんの言葉には、心がこもってない。
特に、サユちゃんの右手の包帯を見てからは、不機嫌さが全身から溢れだしているかのようだ。


「……なんで怪我したって?」

「ちょっとした事故」

「いえ。俺が倒れた時にサユちゃんを巻き込んでしまったんです」

「サトルくん」


サユちゃんが困った顔で俺を見る。

言わなくても良いって? でも、おじさん相手に嘘をついて、こじれるのは嫌だ。ごまかせる相手だとは思えないし、昔から、おじさんはサユちゃんを大事にしている。嘘つくのはフェアじゃない。

おじさんは、俺を冷たい目で見ると、溜息を一つついた。


「サユと、……付き合ってるって?」

「お父さん!」

「はい。お付き合いさせてもらってます」


ああそれも知られているから機嫌が悪いのか。
サユちゃんが言ったのかな。もしくはサイジがばらしたのか。