サユちゃんを信じてやれないから詰め寄って、新見の気持ちを無視したからどつかれて、そして結果的に彼女に怪我をさせてしまった。今は、県展用の絵を書いている最中だったのに。


「とにかく行こう」


彼女を引っ張るようにして、保健室まで行く。
木下が内線を入れていたらしく、養護教諭は俺達を訳知り顔で迎え入れ、手際よく手当してくれた。


「葉山さんは手首捻挫ね。シップしてれば治るレベルだけど一週間位は安静にしていたほうがいいわ。利き手だから不便でしょうけど」

「はい」

「中津川くんは大丈夫だと思うけど……もし今後おかしな症状でもでたら早目に病院に行ったほうがいいわね。蹴った子には木下先生から説教してもらいましょう。何があろうとお腹を蹴るのはダメよ」

「はぁ」

「それとも念のため今病院に行く?」

「いえ! いいです」


俺は慌てて首を降り、椅子に座って肩を落としている彼女を見つめる。
サユちゃんは、自分の手首の包帯をじっと見ると養護教諭に頼りなげに問いかけた。


「先生」

「何? 葉山さん」

「絵を描くのはダメですか?」

「……うーん。数日はねぇ。痛くて描けないと思うわよ?」

「……そうですか」


肩を落として、サユちゃんはそれきり黙ってしまった。

俺のせいだ。
大事な絵を仕上げているところだったのに。
俺が彼女の邪魔をしてしまった。


守りたい、なんてあんなにいきがっていたくせに。
俺がしたことはなんだよ。

彼女を傷つけることしか出来なかったんじゃないか。