「ちょっと待てよ、中津川は今俺と話してんだぜ!」
突っかかっていくのは夏目。お前も落ち着け。
「大丈夫だよ、お前も連れてくから。ええと、名前は何だっけ」
「夏目だよ! 夏目信也。連れてくってどこにだよ」
「カラオケ、カラオケ。さー皆で行こう。レッツゴー」
夏目の襟首を掴んで連れて行く和晃。案外力あるな、コイツ。
「まてぇ、俺はサユちゃん先輩と話がっ」
そこまで聞いて思い出す。
そうだよ、俺もサユちゃんと話がしたかったんだ。
夏目は今和晃に捕まっているから。目下大チャンス中じゃねーか。
「悪いなー俺、陸上部見学に行くから。またなー」
一気にまくしたてて駆け出す。
「待てぇ、中津川。逃げるとは卑怯なり!」
いつの時代の男だ。お前はサムライか。
ツッコミをいれようかと思ったが、そこにこだわっているといつまでもここから脱出できない。
夏目の言葉はシカトして教室を出て、二階への階段を駆け上がった。