俺の声と重なるように、上の方から呆けたような颯の声がした。
「……かっけぇ」
いつも飄々としている颯が、興奮したような顔で新見の後ろ姿を見つめてる。
颯は俺の方を見ると、「大丈夫か、サトル。大丈夫だな?」といい、俺の返事も聞かないうちに駆け出していった。
まさか颯。新見に?
つか、あっさり女のほうをとるなよ、親友。
「……なんだよ、アイツ」
まだ痛む腹を抑えながら、うずくまったままのサユちゃんをみやる。
「ごめん、サユちゃん。大丈夫?」
「ん、……ったた」
眉を寄せたまま、右手首を押さえる彼女は涙目になっている。
サーッという音が聞こえそうなほど一気に血の気が引いていった。
「サユちゃん? サユっ、どこか怪我した?」
「えへ。……だいじょ、ぶ」
全然大丈夫じゃない。
彼女が抑えている右手首は、赤くなって腫れている。どうやら一緒に倒れた時に手をひねってしまったらしい。
「サユ、手ぇ腫れてるぞ。保健室に行った方がいい」
木下が言い、彼女を立たせようと腕を掴む。俺はそれを遮るようにして、木下の手首を掴んだ。
「俺が連れて行きます」
「ああ。とにかく行って来い。ついでにお前も蹴られた腹を見てもらえよ。俺も後から行く」
木下もここは俺に任せる気になったのか、彼女から手を離した。
「サユちゃん、歩ける?」
「平気。足はなんともないし」
「ごめん。俺のせいだ」
「どうして? 今のは事故みたいなもんだよ」
「でも」